フェアトレード商品を選ぶということ
身近なお店やスーパーでもよく見かけるようになった「フェアトレード」の商品。最近では、大手企業も続々とフェアトレード製品の扱いを拡大しています。フェアトレードとは、原料や製品が適正な価格で継続的に取り引きされ、持続的な生産者の労働環境や生活水準の向上を目指す貿易の仕組みのことをいいます。
その中には大きな目的として挙げられているのが「子供の権利の保護」および「児童労働の撤廃」です。2001年4月に西アフリカのギニア湾で、10歳から14歳の子供139人を乗せた船が消息を絶った事件が報道されました。彼らは近隣の国から連れて来られた子供たちで、コートジボワールのカカオ農園で働くために売り渡されるはずでした。報道によると、船はガボンの港で上陸を拒否され、ベニンへ引き返しましたが、その時には23人の子供しか乗っておらず、船長が子供を海へ投げ捨てたと疑われましたが、真相は謎のまま。このニュースがきっかけで、欧米を中心に、労働者として人身売買される子供がいること、そしてカカオの栽培に児童労働が使われていることが世界中に知れ渡ることになったのです。
IITA(国際熱帯農業研究所)が実施した西アフリカのカカオ生産における児童労働の調査によると、コートジボワールだけで実に13万人の子供が農園での労働に従事していることが分かっています。さらに、こうした子供たちの64%が14歳以下とされ、農薬散布や刃物の使用などの身体的な危険にさらされるほか、教育を受ける機会を奪われているのが現状です。
このような児童の奴隷化をもたらしているのは生産国の貧困。国際フェアトレード機構は、カカオ農家が生産コストを賄いながら生活水準を保っていくには、1日あたり2.51ドルの収入が必要であるところ、実際には平均0.78ドル/日の収入しかないことを明らかにしました。こうした貧困を根源とする様々な問題を緩和するためのフェアトレードは、生産者へ支払われる価格に基準を設定し、最低価格および固定プレミアムを設定している唯一の認証制度です。品物の代金とは別に支払われるプレミアムは、主に機器の購入、品質や収穫高を向上させるためのトレーニング、組合運営に必要な設備の整備などに使用されるほか、公民館等のコミュニティー発展のための設備の充実、学校の整備、奨学金制度等の教育に使われています。
商品を手に取る際、フェアトレード商品を選ぶことで、安くておいしいということだけではなく、原料がどのように調達され、目の前に商品として並ぶことになったのかを考える機会がうまれます。また、海の向こうの生産者と消費者のサステイナブルな関係もその第一歩を踏み出すことになるのです。フェアトレード認証は、よく、オーガニック認証と、関連があるように扱われたりすることもありますが、実は、フェアトレード認証というものは、オーガニック認証とは、全く別物。むしろ、真逆の認証であったりもするのです。そのお話は、また別の機会に。